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技術士協同組合は1976年設立の文部科学省認可の事業協同組合です


技術士協同組合は1976年設立の文部科学省認可の事業協同組合であり、
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コーナー世話役:高木育巨(電気電子)

高木育巨(電気電子)の連載コラム
公共工事の不正・不良はなぜなくならないか



 公共工事問題研究


 2019年8月11日

第3回 なぜ、現在の「特記仕様書」ではだめか

なぜ、現在の特記仕様書ではだめなのでしょうか。理由は2つあります。1つは、これは役所で作れるようなものではないという事。もう1つは、この仕様書では、本当に必要な仕様が伝えられないということです。

第1の問題についてですが、仕様書は、計画仕様書と設計仕様書があります。入札は、計画段階の話ですから、必要なのは計画仕様書です。しかし、現在の特記仕様書は、設計レベルの仕様書になってしまっています。設計仕様書は役所で作れるようなものではありません。設計事務所等に依頼しているから問題ないと云われるかと思いますが、設計仕様書は、設計しなければ作れません。即ち、設計事務所でも作れません。

設計事務所でも作れないとすれば、何らかの方法で、業者の設計者に依頼するしかありません。しかし、業者に協力を依頼したら、入札になりませんね

仮に、業者に協力を依頼できたとしましょう。依頼された業者だって、実際に設計しなければできません。設計は1人ではできません。関連業者とも何度も打ち合わせしなければなりません。関連業者も、まだ受注もしていないものの仕様打ち合わせなんか対応してくれないでしょう。お役所も打ち合わせに応じてくれないでしょう。ですから、この仕事は本質的に、無理難題なのです。

設計費を支払えばよいだろう、と言われるかもしれませんが、業者の設計者の仕事は、自社の工場の仕事を作ることです。即ち、設計者は、設計により設計費用の何倍、何十倍の付加価値を生み出しています。いくら設計費を積まれても、自社工場に入らない仕事なんか出来ないのです。

具体的に、ケーブルの仕様部分を見てみましょう。特記仕様書には、制御盤からある設備へのケーブル仕様が記載されています。ケーブルの種類、本数、長さまで、詳細に記載されています。制御盤の設計もしていない状態で、ケーブルの仕様なんて分かる筈がありませんね。

ケーブルの仕様は電気工事の分野です。電気工事は、通常外注で、電気設備の設計者もケーブルの仕様までは作れません。電気工事業者の協力も必要になります。
しかし、実は、実需においても、ケーブルの長さなんて計算しません。電線類はリールで購入して、必要なだけ引く出しながら使用します。従って、この資料は、ほとんど、意味のない仕事なのです。

もう一つの理由は、この仕様書では、本当に必要な仕様の伝達ができないということです。昔は、構成機器を指定すれば、大体の仕様は伝達できました。しかし、ソフトの比率が大きくなってきた現在では、目に見える構成機器だけを指定しても、必要な情報はほとんど伝わりません。寅さんの「男はつらいよ」の歌に、「目方で男が売れるなら、こんな苦労はかけまいに」というのがありますが、現代では、ものの大きさや重さや形だけ指定しても、ほとんど必要な情報は伝わらないということです。

出来る訳がない仕事をやろうとすれば、不祥事が入り込む可能性が出てきます。なぜ、このような意味のない、出来る訳がない仕事をしているのでしょうか。これらについて、次回から、少しずつ考えてみましょう。

第2回 すべての問題が特記仕様書から始まる。

公共工事の発注は、競争入札によることが多い。入札というのは、応札者は公示まで内容を知りえず、公示後は、原則としてこの件に関する質疑も禁止される。不正など起こる筈がない。なぜ、談合等の不正が起こるのであろうか。実は、この入札に使用する、特記仕様書に問題がありそうである。

競争入札の場合、応札者に公平な条件を与えるため、詳細な仕様書が作られる。具体的には、すべての構成機器を詳細に拾い出して特記仕様書をつくる。昔は、機器の構成も簡単であったので、構成機器の拾い出しも可能であったと思われるが、現在では、機器の構成も複雑になり、すべての構成機器を拾いだすのは、ほとんど不可能な作業になった。これを、外部の業者との情報交流も遮断された状態で、自前で作らなければならない。

しかし、不思議なことに、非常に立派な資料が出てくる。膨大な資料である。どのようにして作られたのであろうか。この話は、次回以降の話に譲るとして、まず、この資料の意味について考えてみたい。

確かに昔は、すべての構成機器をすべて指定すれば、同じ条件で入札ができた。しかし、技術の進歩により、構成機器だけを積算しても、それが、工事の価値に対応しなくなってきた。すなわち、折角苦心して特記仕様書を作っても、入札資料としての機能を十分果たせなくなってきたということである。特にこの傾向は、情報や電気の分野で顕著である。

公共工事の主役は、土木であり建築である。情報や電気の分野は、金額的比率でもわずかであり。全体としては、大した問題ではないと思われるかもしれない。しかし、情報や電気の問題は、 情報や電気だけの問題ではない。その影響はシステム全体に及ぶ。例えばプログラムの1行を間違えただけで、あるいは、接点の接続を1つ間違えただけで、高機能の設備が一気に「殺人マシン」に変えてしまう可能性もある。

情報設備や電気設備を侮ってはならない。この問題は、後で出てくる監理技術者、外部監査の問題にも関連してくる。情報や電気の重要性というより、その凶暴性、危険性を十分認識すべきである。

次回は、電気設備工事の特記仕様書の問題点を取り上げてみたい。

第1回 はじめに

談合問題や不良工事で、公共工事の関係者は、厳しい批判が向けられています。しかし、それぞれの担当者は、それぞれの環境の中で、工事の完成という共通の目的に向けて、官民一体になって、みんな一生懸命頑張っています。
誰も、やりたくて談合をやっている訳ではありません。誰も、手抜きをしようと思って不良工事をしている訳ではありません。実は、ここには、談合をやらなければ、所定の仕事が遂行出来なかったり、どのように頑張っても、十分な品質管理ができる訳がないという、構造的な問題があるようです。私は、約20年間、この構造的この構造的問題を見てきました。私は、この構造的問題に手を付けず、担当者ばかり批判しても、解決にならないと感じています。

このコーナーは、誰を批判しているのでもありません。みんなが一生懸命やりさえすれば不正行動をしなくても工事が進行し、あるいは不良工事が発生しないような世界にしたいと願って開設しました。

構造的な問題は、個人の手に負える問題ではありません。もちろん、私が偉そうなことを言うつもりもありません、皆さんのお知恵を拝借して、少しずつでも、構造的な問題を取り除き、誇りある楽しい世界にしたいと願っています。
 
なお、公共工事といっても、ゼネコンが一括扱うような国家規模の公共工事は検討対象にしていません。市や区レベルで扱える程度の工事を対象に考えています。

皆さんのお知恵を拝借したいので、皆さんの意見が反映できるフェイスブックにリンクを取りました。ここに参加リクエストを出して、どんどん皆さんのご意見を頂き、みんなで、少しずつでも解決していければと思っています。